海外に奨学金や公費で留学する制度は官民でいくつかあり、歴史が古く現在も継続している制度には、アメリカのフルブライト奨学金や外務省の海外留学支援制度などがあります。今も数多くの日本人が海外留学をしており、2021年には4万人を超える日本人が海外留学をしています(※1)。
今回は数ある交換留学制度の中で最も歴史の長い研修制度のひとつ「日墨戦略的グローバル・パートナーシップ研修計画」についてご紹介いたします。
※1 文部科学省「トビタテ!留学JAPAN」
日墨戦略的グローバル・パートナーシップ研修計画を知っていますか?
1971年、日本・メキシコ両国の青年を互いに留学させ、相互理解と友好親善を増進することを目的に、日墨研修生・学生等交流計画(日墨交流計画)がスタートしました。メキシコの当時のエチェベリア大統領が日本の若者をホームステイで受け入れていたことなどから日本に好意的な気持ちを持っており、日本の若者にはメキシコを、メキシコの若者には日本をお互いによく知ってほしいという思いを持ち、在メキシコ日本大使館の付属施設の日本研究センター長に提案したことからこの大規模プロジェクトは始まりました(※2)。
2010年、日本メキシコ交流400周年祝賀の折、日本とメキシコの首脳会談が東京で行われました。日・メキシコ経済連携協定(日墨EPA)を活用し、経済成長を促進するための戦略的パートナーシップの決意を示し、「日墨戦略的グローバル・パートナーシップ行動計画」を作成、名称も「日墨交流計画」から「日墨戦略的グローバル・パートナーシップ研修計画」と改名されました。
※2 在メキシコ日本大使館:「「日墨戦略的グローバル・パートナーシップ研修計画」と50年の歩みJAPAN
外務省:「日墨戦略的グローバル・パートナーシップ研修計画」
外務省:「21世紀における戦略的グローバル・パートナーシップ及び経済成長促進に関する日本・メキシコ共同声明」
研修には短期(2週間)と長期(1年)コースの2種類があります。
長期コースにはスペイン語・メキシコ文化コースと専門コースがあり、語学研修の後、自身で決めた研修を行います。
短期コースでは、政府・公的機関、研究機関等において、専門分野に関わる講義の受講、関係施設の視察等を行います。
研修生に選ばれると、往復の旅費、派遣期間中の一定の滞在経費および授業料・講義料等がメキシコ政府から支給されます。
選考は日本で書類審査、筆記試験、面接等の試験により候補者を選定し、メキシコ側が受け入れを決定する方法で行われます。年齢制限は設けられていませんが、意義・評価の5点のうち2点に若手人材の育成が挙げられています。
他方、日墨パートナーシップ計画でありながら、メキシコのみならず中南米諸国全般で活躍する人材を養成することを目的としている点が、このプロジェクトのユニークな点です。
2024年の短期コース(第50期)は6月に実施済み、長期コース(第51期)は2024年9月の時点で研修実施中のようです。25年度の募集は2025年3月頃になる見込みです。
長期スペイン語・メキシコ文化コースはまずメキシコシティのメキシコ国立自治大学(UNAM)でスペイン語の習得を中心とした研修を受け、スペイン語能力が一定のレベルに達した方は、後半は専門分野の授業履修やインターンなどに参加できます。
長期専門コースは、短期でスペイン語を学んだ後、大学機関等での履修や研究機関等に参加します。
長期コースでは、スペイン語能力試験の結果およびメキシコ国内の受け入れ先に認められた場合、1年間の期間が修了しても引き続きメキシコで学習や研究を続けることができます。
日本・メキシコ両国の相互理解および友好の象徴として1971年にスタートした日墨研修事業は、2023年に派遣50期を迎えました。毎年日本人、メキシコ人がそれぞれ50名ずつ双方の国を訪れ、両国合計で約5,000名以上が本事業に参加しています。
日本で学ぶメキシコ人は、日本全国で日本語や専門領域(農業開発、日本のデザイン、製造技術、情報科学・エンジニアリング等)を学びます。
メキシコで学ぶ日本人は、スペイン語や専門領域(メキシコ文化、公共事業、経済、日本語教育、音楽コミュニケーション等を自身で設定)を学びます。
研修に参加された方の具体例をいくつか紹介します。
2016年 Mさん:長期スペイン語・メキシコ文化コース
スペイン語力の向上や日本の大学での専攻であったメキシコの歴史を肌で感じることを目標に研修に臨みました。
スペイン語はメキシコ国立自治大学付属の外国人向けスペイン語学校に通い、平日の午前中はレベルに合わせたスペイン語の授業、午後はダンスや文学、歴史、地理、考古学、演劇などの授業から自由選択し、1日中スペイン語漬けの生活を送りました。辞書なしで会話ができるようになり、今後はDELE試験にも挑戦する予定です。
また、マヤ文明やアステカ文明の古代遺跡であるテオティワカン遺跡やチチェン・イッツァ遺跡に足を運び、実際のスケールを体全体で味わいました。
2019年 Sさん:長期専門コース
公共事業の事前・事後評価やPDCAに興味があり、特に政策立案に関わる実務を知るため、メキシコ外務省内国際開発協力庁(AMEXCID)でインターンとして、国際協力プロジェクトに関わる文献調査や資料作成などを行っています。広い活動が許されているため、後半はインターンに加えて国内の農業協同組合などを通じて、多角的にメキシコについて理解を深めるつもりです。
2020年 Sさん:長期スペイン語・メキシコ文化コース
メキシコにおける日本語教育の現場に興味を持ち、メキシコでは個人教室で授業の一部を担当したり、メキシコ国立自治大学(UNAM))やメキシコ国立人類学歴史大学(ENAH)の日本語クラスにアシスタントとして参加しています。
予想していたよりも日本語教育の現場が多く、また学ぶ生徒も積極的で、生徒が日本に興味を持っていることを肌で感じます。同時に、メキシコにおける日本語教師の不足が問題になっていることもわかりました。
2020年 Sさん:長期スペイン語・メキシコ文化コース
自分の活動計画に基づいて自由に行動できることが、この研修の魅力でした。スペイン語を極める、研究や実務研修をする、インターンシップやボランティアをするなど、自身で決めることができます。私はチワワ州の伝統舞踊を5か月学び、発表会を行いました。
2022年 Mさん:長期スペイン語・メキシコ文化コース
研修を終えた後、在メキシコの日系企業で働いています。研修で学んだスペイン語やメキシコ人に対する理解が、今の仕事にとても役立っています。
埼玉県:「日墨戦略的グローバル・パートナーシップ研修計画 最終レポート
在メキシコ日本国大使館:「日墨生の生活を紹介します」:「日墨生の生活を紹介します」
JICA:「【メキシコ・平和構築】日墨研修50期記念動画」
在メキシコ日本大使館:「第51期日墨戦略的グローバル・パートナーシップ研修計画」
スペイン語やメキシコに興味があるたくさんの若者がこの研修に参加し、スペイン語を磨き、国際理解を深めてグローバルになっていく例が多く見られました。この研修に参加した後、スペイン語能力や専門領域を活かしてメキシコの企業で働く方や、中米や南米で働いている方も数多くいます。
自費留学のハードルが高いと感じている方や、単なる語学留学以上の経験を求めている方は、ぜひこの研修プログラムを検討してみてください。新しい可能性が広がるかもしれません。
メキシコでの就業の可能性についてご興味がありましたら、ぜひクイックグローバルメキシコまでお気軽にお問い合わせください。
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