メキシコで働こうと決心された皆様は、メキシコの福利厚生について心配になるのではないでしょうか。 メキシコで就職すると、社会保険や年金などはメキシコの制度で受けることになりますが、日本のそれとは少し異なります。 メキシコの福利厚生とはどのようなものか、法定福利厚生と、法定外福利厚生の代表的な例をご説明いたします。 なおここでは、会社の被雇用者になる方を対象とした制度をご紹介いたします(自営業や公務員などを除く)。
- メキシコ在住でも知らない?メキシコの福利厚生とは
- メキシコの法定福利の概要
- メキシコの法定福利厚生の内容
- メキシコの法定外福利厚生
- まとめ
1、メキシコの法定福利の概要
メキシコの法定福利制度は下記に分かれています。
1−1 社会保険制度(健康保険、労災、後遺障害などの保証制度)
IMSS(社会保険庁)が管理しています。
会社の全従業員は IMSSの加入が義務付けられています。
1−2 退職年金、年金積立一括払い制度
IMSSとAFORE(年金管理会社)が管理しています。
1−3 労働者住宅基金
INFONAVIT(労働者住宅基金公団)が管理しています。
1−4 労働者金融基金制度加入
INFONACOT(労働者住宅基金公庫)が管理しています。
1−5 その他の法定福利厚生
PTU(労働者利益配分制度)、研修プログラム、有給休暇、休暇手当、年末ボーナス、休日出勤手当、残業手当など法律によって権利が保証されています。
2、メキシコの法定福利厚生の内容
2−1 社会保険制度
IMSS(社会保険庁)が運営する公立病院が各都市にあり、自己負担金なしで診察を受けることができます。薬代も無料です。労災や後遺症のある人には給付金が与えられます。なお被雇用者の保険料の負担はわずかで大部分が会社負担となります。
2−2 退職年金、年金積立一括払い制度
Sistema de Ahorro para el Retiro、通称SARと呼ばれます。
雇用主が被雇用者の月収の2%相当額を、被雇用主が選んだAFOREの個人アカウントに預金します。この退職年金積立制度はSARと呼ばれる制度です。この SARはアメリカの 401k に倣った制度で、確定給付型ではなく、給付額は年金の運用実績によって変わります。被雇用者は60歳になって職に就いていない場合は、下記の退職年金制度の恩典が得られます。
- IMSSに積立金として1250週間(約24年)収めているものに対しては生涯年金の権利が生じて毎月年金を給付されます。
- 1250週間に満たなかったものについては、上記年金アカウントから一括して引き出す権利があります。
上記の1,2の制度は60歳を過ぎて退職(IMSSを脱退)していれば60歳で積立金の85%まで、残りの15%は65歳を超えた時点で必要書類を揃えれば申請できます。
2−3 労働者住宅基金
労働者住宅基金公団(INFONAVIT)が資金を管理し、労働者の住居用の土地や住居を購入したり、改装したりするためのローンが受けられます。この基金の費用は月収の5%に相当する額を雇用主が負担し、INFONAVITがこれを管理します。被雇用者の負担はありません。
2−4 労働者金融基金制度の加入
労働法により会社は労働者金融基金に加入することを義務付けられています。
会社の従業員は貸付を申し込むことができ、返済は従業員の給料から天引きして当基金に納めることとなります。ただし返済金は労働法の規定の範囲という条件があります。
2−5 その他の法定福利厚生
以下会社から付与される福利厚生の代表的なものです。
- 1月1日(元旦)
- 2月の第1月曜日(2月5日憲法記念日の振替)
- 3月の第3月曜日(3月21日のメキシコ建国の父、ベニート・フアレス生誕日の振替)
- 5月1日(メーデー)
- 9月16日(独立記念日)
- 11月の第3月曜日(11月20日メキシコ革命記念日の振替)
- 12月1日(大統領改選の年のみ)
- 12月25日(クリスマス)
①PTU(Participante de Trabajadores en las Utilidades(労働者利益配分制度)
メキシコ特有の制度で会社の課税所得の10%を利益が出た翌年の5月末までに分配する制度。原資の半分を従業員に労働日数比例で分配し、残りの半額を給与比例で分配するが、組合員のまたはそれに相当する地位の従業員の給与の20%増しを上限として計算します。従って、上下の差があまり出てこない制度となっています。
②研修プログラム
会社の規模や従業員数に関係なく、管理職を含む全ての従業員に教育訓練をあたえなければいけないことが憲法で定められています。教育訓練を実施するにあたり労働者の意見も取り入れてプログラムを作成します。プログラムの実施は社内または社外も可能で、就業時間内に行うことが原則です。なお、進出して間もない企業の場合、実施が遅れているケースもあります。
③有給休暇と休暇手当
入社後 1 年で年に 6 日支給され、5 年までは 毎年2 日ずつ加算されます。5 年以後は 5 年毎に 2 日ずつ加算されます。さらに休暇期間中の割増金としてその間の給与の最低25%が支給されます。特にメーカーでは休暇日数を増やすより、休暇手当の増額を行っているところが多くみられます。企業によっては入社後1年未満で有給休暇が付与されることもあります。
④年末ボーナス
支給時期は 12 月20日以前です。年末の必要経費を賄うための特別手当(Aguinaldo)と称して給与の一部として支給されます。本ボーナスは最低15日分相当の賃金の額が支給されます。中途入社や退職した者には比例分が算出されます。15日分以上のボーナスを設定している企業もあります。
⑤法定の休日(祝日)と休日出勤手当(Día de descanso semanal)
祝日や会社が定めた週の休日(土曜、日曜)などに出勤した場合は、通常の賃金にプラスして 2 倍の賃金が支払われます。 また日曜日に出勤した場合はこれに加えて通常の賃金の25%の賃金が支払われます。なお、休日出勤を振替休日で補うケースもあります。
法律で、以下の祝日が設定されています。
⑥出産・育児休暇・養子縁組による休暇
出産の前6週間及び産後6週間の有給休暇が与えられますが、手続きをして産前の6週間のうち4週間を産後6週間に加えてもらうことができます。
子供が障害をもって生まれてきた場合は8週間まで延長することができます。
また男性従業員にも5日間の有給休暇が与えられ、養子を迎えた時も同様です。
⑦年少労働者の保護
15歳から18歳までの若年労働者の就業管理に様々な制約が定めて保護されています。
例えば就業時間の短縮、就業時間中の休憩時間の延長、夜間労働の禁止、等があります。
⑧授乳補助
出産後の女性労働者は、会社が指定した場所で30分の授乳休憩を1日に2回取ることができます。もしくは双方合意の上、勤務時間を1時間短縮することができます。
⑨勤続手当
退職時に勤続各年につき、12日分の手当が支給されます。ただし自発解雇の場合は例外で15年以上の勤務者のみ、各年につき12日分の勤続手当が支給されます。
⑩不当解雇の保証
3ヶ月分の給与と清算金(年末ボーナス、休暇と休暇手当、勤続手当の比例分)が支給されます。
⑪残業手当
メキシコでは時間外勤務は1日あたり3時間、週3回まで、週計9時間を超えてはならないと定められています。時間外勤務に対しては、通常賃金の2倍の賃金が支払われます。また週9時間を超える勤務に対しては当局から罰則を科されるほか、通常の3倍の賃金が支払われます。 さらに週9時間を超える残業は従業員が拒否する権利もあります。ただし、企業によっては給与に残業代が予め含まれていることもあります。
会社によってはより手厚い福利厚生を用意しているケースもあります。
法定外福利厚生の代表的な例を見ていきましょう。
3、メキシコの法定外福利厚生
3−1 フードクーポン(Vales de despensa)
食品を購入できる金券として会社から支給されます。給与の10%の上限が定められています。 これは税控除を相殺する制度のひとつで、厚生費扱いで所得非課税となるため、雇用者・被雇用者ともにメリットがあり、採用している会社が多くあります。
3−2 無遅刻ボーナス(Bono por puntualidad)
労働者の時間厳守を推奨するための制度で、計算方法や金額は企業により異なりますが、無遅刻無欠勤の場合、1日分の給与が加算されるケースが多いようです。ただし作業者や事務職員を対象としているもので、マネージャークラス以上には適用されないことがほとんどです。
3−3 高額医療保険(Seguro de Gastos Médicos Mayores)
会社員は公立病院(IMSS)で診療や薬を無料で受けることができますが、公立病院は混んでいる場合が多いため、私立病院での診療ができるように、一部の企業では民間の医療保険に加入している場合があります。
日常的な出費や、入院、手術の場合これがあると安心です。
3−4 積立金(Fondo de Ahorro)
給与の13%を上限に、雇用者・被雇用者ともに同額を積立て、年末に払い戻す制度です。
雇用者負担分は厚生費扱いで所得税非課税となり、被雇用者には非課税で積立金全額と利息が払い戻されます。
3−5 通勤費補助(Ayuda de Transporte)
車社会のメキシコでは、マイカー通勤者にはガソリン費用の補助があります。
車を持たず、公共サービスがない場所や、夜間勤務をしなければいけない会社では通勤バスを手配するなどのサポートがあります。
3−6 メキシコの慣習上の休日
その他の休日法定で定められた休日の他に、メキシコの慣習上の休日(Días de Descansos)が支給される会社もあります。この日が法定休日に追加の有給休暇とされます。
- 3月または4月の(聖週間の木曜日と金曜日)
- 5月10日(母の日)
- 11月2日(死者の日)
- 12月12日(聖母グアダルーペの日)
このほかに会社によっては年末1週間の一斉休暇や、休日を利用した連休を定めているところもあります。
4、まとめ
メキシコは所得税が累進税率により 10~30%程度と、日本に比べ課税が高いように感じられますが、医療保険金や年金の負担が少なく、また非課税の福利厚生が充実しているとも言えます。
日系企業には法定外福利が充実している企業も多いので、求職時には給与面以外のベネフィットにも注目して探してみましょう。
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